あの人を待つのは、案外好き。思い描いた姿が現実になる瞬間を想像すると、今から鼓動が早くなる。コツコツと聞こえる足音が、私の体中に響いていく。
「お疲れ様です」
ダブルのスーツの彼は、そう言って少し微笑む。私はそれだけでくらくらとするようで、言葉を返すだけで精いっぱい。自分の唇の動きが変じゃないか、態度がぎこちないんじゃないかなんて、余計なことで頭がいっぱいになる。……本当は、今すぐにでも抱きしめてもらいたいのに。
気付いた時には惹かれていて、既に手遅れだった。ダメだと思えば思うほど虜になって、もう逃げられない。居ても立っても居られないような焦りが体中に広がって……でも、それなのに指一本も触れることができない。
隣にある肩が触れそうで、テーブルの上の手が重なりそうで……その瞬間が待ち遠しいのに、どこか恐ろしくもある。
ウエハラカムイが絶対零度の天使なら、この人はやさしい悪魔。飄々とした態度が私を絡めとって、離してはくれない。やさしすぎる人よ。
2025/2/23