※性的表現
押し当てられるくちびる。いつの間にか捕らえられた身体はびくともしない。意識はこの柔い感触へと向き、他の雑念は全て消え去った。
「しようか」
私の返事がどっちだろうと構わないくせに一応聞いてくるところが彼らしい。待ちきれない手が身体を撫でる。やけに慣れた手つきに、これからのよろこびと薄い嫉妬を感じた。
***
金田くんに抱かれると、どうもこの世の終わりのような悲壮感に包まれる。生活感溢れる、この散らかった部屋で二人横になることは何だか虚しい。少しやつれたタオルケットを素肌にのせて見る夢は、昨日の復習ばかりでつまらない。
布から覗く、はねる素肌が生々しくて目を閉じた。
「
夢子、いつまでいる?」
「明日の昼前には帰るよ」
「あ、そう」
「早く帰れって?」
「いや、」
私の顔にかかった髪をそっと払う、骨張った手。バイクのハンドルと女の子しか触らないような浮気性の手が、やさしさを見せた。
「もっと長くいてもいいってこと」
ギラつきのない目が甘えてくる。かわいいと思ってしまえば、彼の手にくちづけてしまう。金田くんは目を細めると、そのまま抱き寄せた。
もう冷めた身体には互いのぬくもりが愛しい。肌と肌がぴったりとくっついてしまえば、何者も間に入れない。
特別鍛えている訳じゃない体でも、緩やかな筋肉の隆起が素晴らしい魅力として私の目に映る。私には無いものが全て羨ましい。
「はっきり言えばいいのに」
少し照れたようにする微笑む彼は珍しくて、素直にうれしい。私だけにこんな顔を見せてくれるならば。
「あ、もしかして部屋の片付けとか家事をさせるためじゃないよね」
「そんなわけないじゃん」
「ほんと?」
「ほんとだって」
頬に触れるくちびるが本音だという。少し力が入る腕に期待してしまう。
いつから、このまま眠ってしまいそうな程に安心できる腕の中になったのか――意外な一面を見る度に彼の虜になっている。
その一面が本来の顔ならば私はもっとのめり込むことになるけれど、そうなってもいい。さっきの悲壮感については、心の中で謝ろう。
しばらくの抱擁の後、金田くんがごそごそと動き出す。タオルケットの隙間からぬるい空気が肌に触れる。
「
夢子」
ささやくように低く呼ぶ声が目を、意識を起こす。そのまま、なされるがままを待っている。
「……金田くん」
暗くて光の入らない妖しい目が私を見つめる。覆うように私の体に陰をつくられては、目を反らせない。近づく顔にも目を閉じることはできない。感覚の分散が思考の邪魔をする。
「しようか」
咥えられた獲物のように、しなびた目をするしかない。
END